Japanese
English
綜説
複合脂質の酵素化學
Enzyme Chemistry of the Conjugated Lipid
安田 守雄
1
,
藤野 安彦
1
Morio YASUDA
1
1北海道大學醫學部 醫化學教室
1Dept. of Medical Chemistry, Hokkaido University, School of Medicine
pp.146-153
発行日 1953年2月15日
Published Date 1953/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905694
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緒言
近來生化學の領域に於て,生體物質の代謝機序の究明に酵素化學的研究が見事な成果を收めつゝあるが,複合脂質に關する酵素化學的研究は他の分野に較べて著しく遲れており,今後の研究に俟つべき点が少くない。それは主として複合脂質そのものゝ分離精製,化學構造等に明瞭を缺く部分が多いためで,ましてその生理作用に關しては,その分布状態から考えて恐らく生機的に重要な意義を有するものと予想せられるに拘ず,或る種の燐脂質が脂質の中間代謝に關與すると云う以外殆ど見るべき知見がないと云つても過言ではない。從つて今後複合脂質の生機的意義或は相關的代謝機序を明かにする上に於て,他の分野に於けると同樣に酵素化學的研究が極めて重要な役割を演ずるものと考えられる。
複合脂質の中,從來酵素化學の對象となつたものは主としてLecithinとCephalinであつて,Sphingomyelin及びCerebrosideについても多少の研究が行われた。其の他の複合脂質についての研究が殆ど見当らないのは,それ等の複合脂質自體の研究が近年漸くその緒についた事情から考えて蓋し止むを得ないところであろう。本稿に於ては,Lecithin及びCephalinの分解酵素を主として述べ其の他の複合脂質分解酵素に關する少數の研究も併せて紹介して,一應複合脂質に關する酵素化學的研究の概要を展望したいと思う。
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