論述
血色素の分解反應について
上代 晧三
1
1日本醫科大學生化學教室
pp.74-82
発行日 1952年10月15日
Published Date 1952/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905675
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
まえがき
Hemoglobinから膽汁色素への道は,生理的にも化學的にも既に古くからの問題である。この代謝的分解過程の研究が今日の段階に至るまでに,最も重要な契機をつくつたのは,中間段階物質というか,膽汁色素生成の初段階物質としての意義をbiliverdinに認めたLembergの見透しであつた。そして比較的生理的な條件に近い試驗管反應によつて,hemoglobinおよびhemochromeから緑色をした膽汁色素性の物質への分解に達した數種の模型實驗が報告され,この緑色物質をbiliverdinの前驅體と考えることが研究者の興味の中心となつた。そしてこれら模型反應の過程が,生理的な代謝過程に近いものと推定されているのである。實際にある種の模型反應産物からは容易にbiliverdinが收得されている。箇々の模型反應については後にのべる。
一般にheme- 蛋白質類にしてもhemochrome類にしても,それらはFeporphyrin- 鹽基錯鹽としてそれぞれ特有の色をもち,特有の分光像を示す。從つてこれらの物質の代謝的變化を追究するには分光學的手段が最も有力である。多くの研究が分光學的方法によつているのはこのためであり,またそれによつてのみ迅速な定量的追跡が可能である。このこともまたこの研究が今日の成果に達した大きな原因である。
Copyright © 1952, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.