論述
硫酸銅法に關する理論的並に實驗的考察
柳澤 文正
1
,
山岨 好道
1
,
水木 幹三
1
1廣島原子爆彈災害調査委員會
pp.14-18
発行日 1950年8月15日
Published Date 1950/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905525
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1.緒論
第二次世界大戰に米軍野戰醫學の一翼を擔つて活用された硫酸銅法はロックフェラー研究所に於いてR.A.Phillips D.D.Van Slyke及び其の協同研究者(1943)が健常米人20例を基礎として確立した血液並に血漿比重測定法である。此の方法に依れば血液血漿の比重を測定するだけでヘモグロビン量血球容積血漿蛋白が容易に計出されるのである。從つて是等により比較的簡易に出血の影響,血中不足成分を知る事が出來る。臨床的に貧血の種類決定,輸血の材料撰擇,輸血の必要量決定が出來るのである。其の原理は衆知の硫酸銅液内の血液及び血漿は直ちに凝固し比重を殆ど不變の儘液内に浮游する事にある。實施に當つて一定間隔の比重の硫酸銅水溶液を並べ適宜一滴の血液,血漿を落し其の滴の液内に於ける浮沈の状況に依り各々の比重を定めるのである。前記Phillips.Van Slykeは20例の健常米人を基礎とし此の二つの比重からヘモグロビン,血球容積,血漿蛋白の一見して計算出來る様に計算圖表(原名Nomogram)を作つている爲二つの比重から直ちに以上三つの數値を決定出來る。
此の方法は迅速簡易で理論的に正確である點及び何等の特殊な器具,試薬を必要としない點から研究資材不足に悩む日本醫學に好適の方法であると考える。
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