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"サルバルサン"劑の體外排泄に關する實驗的研究
籏野 倫
1
1慶應義塾大學醫學部皮膚科泌尿器科教室
pp.206-214
発行日 1950年5月1日
Published Date 1950/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200349
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1.緒論
1909年にサルバルサン(以下サと略稱する)が發見されて以來サ劑の體外排泄に關しては多數の報告があり報告者により其の數値に著しい差異があるが靜脈注射後の尿中排泄は凡そ5分後に始まり1乃至2週間續き長きは3ヵ月後迄も證明されたと言われている.其の生體からの排泄形態に就てもサ劑その儘の形態で排泄されると言う説(A. belin)或は生體内で速かに酸化分解せられ酸化又は遺元産物として存在し無機の砒素(亞砒酸及び砒酸)の型で豐富に排泄せられると言う説(Sieburg)等がある.其の證明方法も比色定量法,重量分析法等に分れている.マファルゾール(以下マと略稱する)は1934年米國のTatum & Cooperにより初めて臨床的に使用せられ優秀なる効果が認められて以來我國に於ても諸家により追試せられ次第に從來のネオアルゼノベンツォールに變らんとしつつある現況である.然るにその體外排泄状況に就ての報告は極めて僅少で,注射直後の尿中排泄状況の報告は余の寡聞未だこれを識らない.強力滅芽療法を發揮するには何らがの手段で其の効力を上げ或は毒性を低下せしめて大量投與を可能ならしめる事が必要である.更に副作用に封しては種々の藥劑が其の治療或は豫防に用いられている.
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