論述
ザリガニCambarusの單純な網膜に於ける單位受容器の働作流
花岡 利昌
1
1奈良女子大学生理学研究室
pp.8-13
発行日 1950年8月15日
Published Date 1950/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905524
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1.緒言
光刺激に伴う網膜の電流発生は光覚の機序に最も関連深いものとして,Holmgren 1865並びにDewer, McKendrick 1893の発見以來多数の研究者により精細に檢討されて來たのであるが,脊椎動物網膜の構造は働作流の発生部位を組織学的に決定するにはあまりにも微細且複雜であるために,無脊椎動物のより單純な網膜に於ける研究も又数多くなされて來た(頭足類Beck 1899, Piper 1904, Fröhlich 1917, Therman 1940,鰕Riedel 1918, Limulus Hartline 1928,昆虫類Hartline 1928, Jahn其他1938,'39,'42, Bernhard 1942,筆者1950).然るに之等の無脊椎動物眼といえども必ずしも組織学的に見た構造が單純でなく,從來最も單純な受容器を持つものと考えられていたカブトガニLimulusに於ても,尚その感光細胞に2型あり,又ゲンゴロウダマシDytiscusも個眼の数が必ずしも少しとしない.他方Granit及びSavaetichin 1939の微細電極による局所電流の誘導は網膜働作流の分析に極めて有効な方法であるが,異型の受容器の混在する網膜に於ては電場的にみて必ずしも單一受容器の働作流を見ているとは言えず,なお問題を含んでいるのである.
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