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Ⅰ.開口放出の役割
1.生理活性物質の分泌機能18)
細胞内小胞と細胞膜の融合による開口放出(エキソサイトーシス)は,エンドサイトーシスとともに,すべての有核生物が持つ機能である。細胞内シグナル系で制御されることなしに恒常的に起こる開口放出は構成性分泌と呼ばれ,細胞外マトリックスや血液中の蛋白質などの分泌に利用されている。それに対して神経伝達物質や,ホルモン,サイトカイン,消化酵素などのさまざまな生理活性物質の開口放出の誘発は,細胞内シグナル系で制御され調節性分泌と呼ばれている。従来,調節性分泌は神経細胞や分泌細胞などに特有な機能と考えられていたが,最近では心筋細胞や脂肪細胞なども,心房性ナトリウム利尿ペプチド(atrial natriuretic peptide:ANP)や,アディポカインのようなホルモンを分泌することが明らかとなってきた。またリンパ球や白血球もさまざまなサイトカインを開口放出しており,調節性分泌も有核細胞で普遍的に行われている可能性が高くなっている。
2.細胞膜成分の組み込み機能18)
細胞膜への膜蛋白質の組み込みにも開口放出が関与している。従来は構成性分泌による組み込みのみが注目されていたが,近年さまざまな膜蛋白質が調節性の分泌機構で細胞膜に組み込まれ,状況に応じた機能調節に関わっていることがわかってきた。インスリンが作用すると,筋肉細胞や脂肪細胞で細胞内へのグルコース取り込みが高まり血糖値が低下する。グルコース取り込み能の増加は,細胞質内にあるGLUT4と呼ばれるグルコーストランスポーターをのせた細胞内小胞が,インスリンレセプターの活性化によって開口放出され,GLUT4が細胞膜へ組み込まれることによって引き起こされる。記憶・学習の基盤と考えられている脳のシナプスの長期増強現象は,さまざまな機構で引き起こされるが,海馬CA1領域でのシナプスでは,神経活動に依存してシナプス後膜上の機能的レセプターの数が増えることによってシナプス伝達効率が高まっている。初期の研究ではグルタミン酸レセプターのリン酸化による機能調節が主と考えられてきたが,最近は開口放出による細胞膜のレセプター数の増加が主要な機構であると考えられるようになってきている。これ以外にも全身のさまざまな臓器においてイオンチャネルやレセプター,接着分子,トランスポーターなどの細胞表面への発現が,調節性分泌機構によって制御されていることが明らかになってきている。
Abstract
Astrocyte secrete many kinds of bioactive substances including growth factors and cytokines. Recent accumulating evidences showed that astrocyte also release neurotransmitters and modulators such as glutamate, ATP and D-serine. At least, some part of these releases are mediated by exocytosis in SNARE- and Ca2+-dependent manners. These functions may play important roles in the regulation of neuronal and brain functions.
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