Japanese
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特集 生体運動の分子機構/研究の発展
細菌鞭毛モーター
Bacterial flagellar motor
杉山 滋
1
,
今栄 康雄
1
Shigeru Sugiyama
1
,
Yasuo Imae
1
1名古屋大学理学部分子生物学教室
pp.85-88
発行日 1988年4月15日
Published Date 1988/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905104
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細菌のような単純な生物でも,外界からの化学的刺激(誘引物質,忌避物質の濃度変化)や物理的刺激(光,熱など)に応じて,ある場所へ集合したり,あるいは,そこから逃げ出すといった行動(走性)をする。このような行動の基礎となる運動器官は,菌体からはえている1本から十数本の鞭毛である。鞭毛基部には,膜に埋め込まれた鞭毛モーターがあり,直径20nm,長さ約10μmのらせん状をした鞭毛を,スクリューのように回転させて運動するわけである。つまり,細菌は,鞭毛モーターという生物における唯一の回転運動器官を持っている。また,他の生物の運動器官がATPをそのエネルギー源としているのに対し,鞭毛モーターは,イオンの流れを直接の駆動力としている点でも特異な存在である。すなわち,鞭毛モーターは,イオンの電気化学的エネルギーを力学的な回転運動に変換する分子機械ともいえる。また,この鞭毛モーターは,右にも左にも回転することができるが,この回転方向の制御が走性発現の基本となっている1)。
このようなユニークな性質を持つ細菌の鞭毛モーターは,研究対象として非常に魅力的であり,多くの研究者の興味を引きつけてきた。その回転の分子機構は現在でも依然として謎であるが,鞭毛モーターの構造や性質について生化学的,物理学的な解析が進み,いくつかの新しい展開がみられたのでここで紹介したい。
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