感染症の検査法 Ⅲ 検査法各論
[2]染色法
8)鞭毛染色
山中 喜代治
1
,
藪内 英子
2
1大手前病院中央検査部
2岐阜大学医学部微生物学講座
pp.698-699
発行日 1989年5月15日
Published Date 1989/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205017
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現行の細菌分類学では鞭毛の数と位置は,対象となる菌株の科,属,もしくは種を決めるのに重要な鍵となっている.細菌鞭毛の太さは光学顕微鏡の分解能以下なので,特殊な染色法で色素や銀粒子などを付着させて太くしないと観察できない.鞭毛染色はレフレル(F. A. J. Löffler,1890)以来,多数の研究者により種々の方法が考案されてきたが,レイフソン(O. Rafson,1951)は効率のよい染色法を案出するとともに,細菌の分類と同定に関係して鞭毛形態の重要性をきわめて明確に打ち出した.それ以来,運動性細菌を扱った分類学の論文には必ず鞭毛形態の光顕写真または電顕写真が添えられるようになった.このことは,臨床細菌検査にも浸透し,簡易同定法などで被検菌株の菌名が得られないときなどに実用されている.しかし近年,鏡検に疎縁な細菌検査室が増え,鞭毛形態はおろか患者材料の直接塗抹鏡検さえ省略する傾向がある.嘆かわしいことである.
これまでに考案された鞭毛染色法はいずれもそれぞれに長所と短所があり,各自の好みに応じて熟練すればよい標本が得られるが,われわれは十数年来レイフソン法を賞用してきたのでその概要を述べる.詳細はすでに記載してあるのでそれを参照されたい1〜3).
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