マスターしよう検査技術
鞭毛染色
山中 喜代治
1
1大手前病院中央検査科細菌検査室
pp.349-355
発行日 1993年4月1日
Published Date 1993/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901456
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細菌細胞の鞭毛は,約20,000個の蛋白質(約500個のアミノ酸)によるらせん階段状構造を持ち,これが1分間に1万回転以上の高速回転で運動することが判明している.さらにこの鞭毛は,その回転運動の停止,逆回転を瞬時に行うことが可能であり,菌の種類によっては1〜2秒ごとに方向転換し,餌を捜し求める(体表のセンサーで糖やアミノ酸濃度の濃い方向へ進む).この高性能運動体の形状およびその位置と数の確認は,これまで細菌分類学上重要な鍵とされ,さらに分離菌株の同定検査の1つとしても重視されてきた.特に,従来の生化学性状確認試験で菌種決定できなかった菌株が,ただ1つの鞭毛の確認で同定される場合もあり,美しい標本の作製とは別に手軽に実施してほしい検査である.
ここでは日常検査における鞭毛染色鏡検の有用性および染色手技のポイントについて概説する.
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