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特集 遺伝子疾患解析の発展
オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症
Ornithine transcarbamylase deficiency
羽田 明
1
,
島田 和典
1
Akira Hata
1
,
Kazunori Shimada
1
1熊本大学医学部生化学第一
pp.33-37
発行日 1988年2月15日
Published Date 1988/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905094
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オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)は尿素合成(図1)の2番目のステップ,すなわちオルニチンとカルバミルリン酸を基質としてシトルリンを合成する反応に関与する。またこの酵素は尿素合成の最初のステップに関与するカルバミルリン酸合成酵素(CPS)と同様,ミトコンドリア内に局在するが,核DNA上に存在する遺伝子によってコードされている。そのため両者とも細胞質内で合成された前駆体がミトコンドリア内に移行しリーダー配列部分が取り除かれて成熟型となる。酵素活性はほぼ肝臓と腸管に限って認められ,また胎児期にはほとんど認められず周産期に急激に上昇してくる。酵素のミトコンドリア内への移行,臓器特異的発現,発生に伴う発現調節などがどのようなメカニズムによっているかは興味深い問題である。
OTC欠損症は尿素サイクル異常症のうちもっとも頻度の高い疾患であり,肝OTCの障害による高アンモニア血症が病態の主体である。X染色体連鎖遺伝形式をとることから男児では症状が重く,生後数日以内に嗜眠状態,哺乳力低下で発症し,呼吸促迫,嘔吐,筋緊張亢進または低下の後,痙攣,無呼吸,昏睡状態に陥り死亡する例が多い。他の高アンモニア血症を来す疾患でも同様の症状を示すため,症状のみからではOTC欠損症との鑑別は困難である。
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