特集 Ca2+-チャンネルの最近の動向
特集に寄せて
萩原 生長
1
Susumu Hagiwara
1
1Department of Physiology, School of Medicine, University of California
pp.538
発行日 1987年12月15日
Published Date 1987/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905074
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この特集で取りあげているのは電圧依存性のCaチャンネルであるが,この他に一次的には電圧依存性でない,たとえば化学的物質によって活性化されるCaチャンネルも存在する。後者については今のところ実験結果も少ないが,その生物学的重要性を無視することはできないから,近いうちにその情報も集り同様の特集をする日も来ると思われる。
電圧依存性のCaチャンネルの存在が示唆されたのは1952年NaならびにKチャンネルの考えがHodgkin & Huxleyによって提唱された直後である。1953年Fatt & Katzは甲殻類の筋線維をtetrabutylammoniumで処理すると,外液に電流を運ぶ陽イオンがCaとMgしかなくても活動電位が発生することを示した。1959年になってFatt & Ginsborgがこの電流はCaイオンによって運ばれることを明らかにした。われわれがCaチャンネルと関りを持つようになったのは1960年代の中頃で,アメリカ大陸の太平洋岸に大きな藤壼が生息し,その巨大筋線維がきわめてその研究に適していることを知ってからである。われわれは他のイオンチャンネルとは別にチャンネルが存在することを主張したが,当時は未だ多くの人はCaチャンネルは甲殻類のような特殊な動物にある例外的なもので,生物学的有意性は薄いと考えられていた。
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