特集 こころと脳:とらえがたいものを科学する
特集に寄せて
宮下 保司
1
Yasushi Miyashita
1
1東京大学医学部生理学教室
pp.2-3
発行日 2006年2月15日
Published Date 2006/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100180
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脳の働き,ことにヒトや類縁の動物において進化した高次機能と呼ばれる能力は,自己自身を理解しようとする人類の営みにおいて重要な研究対象です。「生体の科学」誌においてもこれまで何回か脳研究の特集が組まれてきました。最近数年の高次機能研究の加速化をうけて,人間の『こころ』と呼ばれる『とらえがたいもの』をいかにして厳密な科学的探求の体系の中に位置づけるか,を正面から論ずる機が熟してきたと考えます。脳の機能を理解するためには,脳のシステム,神経回路,細胞・分子,脳の病変などにかかわる広範な研究領域を有機的に結び付け,複数の階層を包含した機能発現メカニズムの研究として展開することが必要です。本特集では,「高次機能を実現するシステムとそのシステムを構成する鍵となる細胞メカニズム」という対立軸を設定し,前者のシステムレベルの側から後者の方向を眺めた現在の到達点および将来の展望について考えたいと思います。
では,『こころ』と呼ばれる『とらえがたいもの』を科学するにはどのような問題設定が有効でしょうか?
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