Japanese
English
謎シリーズ
「夢」の神経生物学
Neurobiology of dreaming
酒井 一弥
1
Kazuya Sakai
1
1Département de Médecine Expérimentale, Université Claude Bernard
pp.159-163
発行日 1985年4月15日
Published Date 1985/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904717
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乳児は乳を吸っている時以外は眠っている。子供は1日のほぼ半分を,大人はその三分の一を眠りにあてている。ヒトはしたがって60歳になれば,20年間を寝て過し,目覚めた意識の世界を離れ,睡眠という無意識の世界に身を置いたことになる。目覚めた意識の状態,言い換えれば覚醒時における外界や自己の身体感覚の認知,そして人間のみのもつ内省という自己認識の状態と,睡眠という無意識の状態を結びつけているものが夢であり,夢は眠り夢見る者と,目覚めてその夢を想起している者に共通の場を与え,意識の世界と無意識の世界の橋わたしをしているとも言える。
われわれは現在脳波などを記録することによって睡眠状態を客観的に捉えることができる。そして後述するように,「逆説睡眠」と呼ばれる特殊な睡眠期にわれわれは皆夢を見ること,夢を見ないという者も実際は夢を見ているのであり,ただ夢を見たということを覚えていないだけなのだということがわかってきた。しかし正確に言うならば,われわれは夢を見るのではなく夢を見させられているのであり,夢はまたあくまでも夢を体験したものの主観性を通して,覚醒時における想起という形でしか捉えることができない。夢はなぜどのようにして生じるのか。脳のどのような細胞の活動に由来し,どのような仕組で意識にのぼってくるのか。
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