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特集 神経科学の仮説
心の創発仮説—創発主義的唯物論
Emergence hypothesis of mind ; Emergentist materialism
黒崎 宏
1
Hiroshi Kurosaki
1
1成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科
pp.215-219
発行日 1984年6月15日
Published Date 1984/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904587
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Ⅰ.創発主義的唯物論(その1)
神経科学における最終目標は,おそらく「心」に関する科学的解明であろう。しかし,現在の神経科学,特に脳生理学の現状は,心,特に人間の精神に関する科学的解明という目標に対し,やっとその緒についた,といった段階のように見うけられる。したがって研究者にとっては,精神というものを脳との関係においてどう捉えるか,という問題が,この段階では,自己の科学的研究とは別に,自己の科学的研究を位置づけ性格づける枠組として,特に重要であると思われる。即ち,そのような問題が,研究者にとっては,哲学的問題として重要になってくると思われる。
精神というものを脳との関係においてどう捉えるか,というこの一般的・哲学的問題については,Descartes以来,哲学史上にさまざまな説が現われたことはすでによく知られていると思うが,Bunge1)によれば,それらは大きく,二元論(dualism)と一元論(monism)に分けられ,それぞれが更に5つの説に分けられる。図1を見てほしい2)。二元論とは,精神と脳──一般には物体──をそれぞれ別個の実体(独立存在)とみなすものであり,一元論とは,精神か脳──一般には物体──のどちらか一方のみを実体とみなすものである。
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