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実験講座
成熟脊椎動物からの網膜神経細胞の単離と培養
Solitary neurons in vitro dissociated from verterbrate retina
立花 政夫
1
Masao Tachibana
1
1岡崎国立共同研究機構・生理学研究所・生体情報研究系・神経情報研究部門
pp.405-411
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904549
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網膜を構成する各種神経細胞の接続関係ば電気生理学的・形態学的研究から多くの知見が集積されてきている。網膜での情報処理機構を解明するためには,さらに,個々のシナプスでの伝達機構を分析し,各神経細胞でのシナプス入力の統合機序を調べる必要がある。しかしながら,これらの問題を究明するために網膜そのままを実験に用いると多くの不都合が生じてくる。例えば,網膜にはフィードバック—シナプスの存在が示唆されており,あるシナプスでの化学伝達物質の同定を試みてその候補物質を網膜に投与しても,その物質が直接そのシナプスに作用しているのか,あるいは他の細胞を介して間接的に効果を及ぼしているのかを決定することは必ずしも容易ではない。また多くの候補物質は近隣の細胞に取り込まれてしまうらしく,そのような場合には有効濃度を推定することが難しい。特定の細胞による化学伝達物質の合成や放出を生化学的手法で調べる際には,他の細胞によるコンタミネーションを除くことはほとんど不可能である。また,細胞膜のイオン—コンダクタンス機構を調べるのに有効な膜電位固定法も,視細胞や水平細胞のように同種の細胞どうしが電気的に結合している場合には適用が非常に困難である。こういった,網膜そのままを用いた時に生じる不都合は,特定の細胞を取り出して来て調べることができれば克服することができよう。
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