Japanese
English
講義
夢見の神経生理学
Neurophysiology of Dreaming
J. Allan Hobson
1
,
中村 嘉男
2
1Psychiatry, Harvard Medical School
2東京医科歯科大学顎口腔総合研究施設生理学部門
pp.325-342
発行日 1980年8月15日
Published Date 1980/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903403
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はじめに
夢見の神経生理学について論ずるということは,まことに野心的な試みであります。そこで,まず,この演題によって,私が何を意味しているか,また,何を意味していないかについて述べたいと思います。私は,夢見の主観的体験すなわち心理学的現象とREM睡眠すなわち生理学的現象との間にみられる相関を,脳の状態と意識の状態との間の関係に関する一般的問題を考察するための1つの好機であると考えます。そう考えますと,私は現代イギリス哲学の学派の伝統の流れの中に自分が位置することになりとても気が楽になります。その学派は,唯物論者でも観念論者でもなく,もちろんまた二元論者でもなく,Russelによって「中立的一元論者」と名付けられたものであると自己を規定しています。一元論者という言葉で私が意味するのは,私は,心と身体とを,おそらく単一と思われる過程の2つの局面とみなしているということです。また,中立的という言葉によって私が言いたいのは,心と身体のどちらが基本かという点について,いずれかがもとであるという見解を取らないということなのです。私は,心的現象が脳の現象の原因であるとも考えなければ,また,脳の現象が心的現象の原因であるとも考えません。言いかえますと,私は,夢見の間の私の主観的状態とREM睡眠時の私の脳の状態とは,総体としては相関があることを信じていますが,心と身体との接点を介する因果関係的断定はいたしません。
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