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実験講座
タンニン酸固定法とタンニン酸染色法—原理・像解釈・応用
Fixing and staining methods with tannic acid:principles, interpretations and applications
二重作 豊
1
Yutaka Futaesaku
1
1東京医科歯科大学・難治疾患研究所 超微構造部門
pp.470-482
発行日 1979年12月15日
Published Date 1979/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425903362
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はじめに
人類とタンニン酸の係わり合いは古く,物の本によれば少なくとも二千年とあるが,ヨーロッパ人がその原料をChinese nut gallに求めていたことから推察すると四千年を越えるものと思われる。19世紀までに大工業に発達したタンニンによる鞣革業がクロム酸にとって変わられたころ,Loeffler(1890)23)が初めてタンニン酸を細菌の形態学へ応用し,限外下のべん毛タンパク質とアゾ染料の媒染剤としてタンニン酸を用い,べん毛を顕微鏡下に捕えた。Merck Indexにはタンニン酸がタンパク質,アルカロイド,金属塩などと不溶性沈殿を作るとあり,始めは精巣中のタンパク質緒合性脂質の固定効果の改善のために用いられた25)のであるが,電子顕微鏡下に精子尾部の横断面を観たとき,線毛を構成するマイクロチュブルスの13個のサブユニット像が螢光板に写し出されていた8,9,26)。
タンニン酸も1971年Bostonでの発表25)以来わずか7〜8年で,マイクロチュブルスのサブユニット像35,41)以外にも,弾性線維染色9,29,32),ギャップジャンクションなどの細胞膜間構造物4,36),ペルオキシダーゼ活性の組織化学的検出1,10,27),導電染色法30,31,34),増強染色法18,19,39,40),ネガティブ染色法22)など多方面での応用が発表され,これは筆者の想像以上の成果であった。
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