特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
3.マウス・ラツト
ミュータントマウスの行動解析総論
二木 宏明
1
1東京大学文学部心理学研究室
pp.418-419
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900769
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行動異常解析の基本原理と留意点
障害の性質の分離
ミュータントマウスや人工的に作製した遺伝子欠損マウスの行動異常を解析する場合,まず第一に,欠損させた遺伝子が通常は脳のどの部位に発現するかを検討して適用するテストを決定すべきである。なお,理想的には,同一の装置を使用して,課題Aを行わせた場合は障害が認められるが,課題Bの時には障害が認められないというように,用いる課題を変えて障害の性質を区別するのが望ましい。
たとえば,Morrisの水迷路を用いた研究では,目標の位置を旗をたてて明示した場合には学習できるが,目標の位置を周りの刺激布置に基づいて学習させると障害が生ずることを明らかにすべきである。別の例をあげると,同じく電撃ショックを用いたfear conditioningであっても,contextual fear conditioing(周りの刺激布置―spatial context―に基づいたfear conditioning:海馬損傷で選択的に阻害される)は阻害されるが,ブザーなどの外的刺激を手がかり刺激にしたfear conditioningは阻害されないというかたちの実験デザインを組むことが必要である。なお,扁桃核の損傷では上述の2つのfear conditioningの両方が阻害される。
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