巻頭言
研究の根拠としてのHomeostasis
高木 健太郎
1
1名古屋大学
pp.153
発行日 1964年8月15日
Published Date 1964/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902580
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これまで生体研究にあたつて多現象同時連続記録がつよく要求されてきた。とくに生体全体としての調節機構の研究に従事する人々はこの道に努力してきている。ある人は生体現象記録のためのtransducerの研究に,ある人はその増幅拡大に,または記録器にというように。そして最近ではこれは一括してpolygraphと呼ばれてmakerによる試作機もでまわるようになつてきた。
オリンピックを目前にひかえて,体力,運動の医学生理学的研究もまた拍車がかけられてきた感がある。記録更新という目的の達成のためには運動時のあらゆる現象を正確に把握することが第一段階である。たとえ同一個人であつても同一の運動,同一の記録を出すことはほとんど不可能といつてよいから,医学研究に通常用いられる統計的処理はその方法的価値がうすれてきて,一発必中主義的なただ一回だけのchanceを正確にとらえるためにできるだけ多現象をということが絶対命令的になつてくる。しかしながら,安静時においてさえ困難な測定であるから,運動時の多現象同時記録を求めることは至難なことであろう。
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