初耳事典
Arginine paradox―アルギニンパラドックス/他5件
中木 敏夫
1
1帝京大学医学部薬理学
pp.344-346
発行日 2002年8月15日
Published Date 2002/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902560
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L-アルギニン(L-Arg)が注目を集めるようになったのは,一酸化窒素合成酵素(NOS)の基質であることが明らかになったからである。NOSには3種類のアイソザイムがある。それぞれの精製酵素から得られるKm値は1-2μMである。一方,生体内のL-Arg濃度は血漿,細胞内いずれも約100μMである。このことより,3種類のNOSに対して,L-Argは細胞内濃度によりすでに十分な基質濃度に達していることになる。したがって,L-Argを増加させても活性は最大でもわずかに(1%程度)増加するのみであり,大きな反応として認知できる量のNOが新たに産生されるとは考えられない。それにもかかわらず,新たに外部からL-Argを追加するとNOの産生量が増加し,NOによる生体反応が惹起されることが知られている。この現象をアルギニンパラドックスと呼ぶ。
この説明として,次のことが考えられている。(1)内因性拮抗物質(ジメチルアルギニン,シトルリンなど)が存在するため,NOSを活性化するためには実際の基質濃度よりも高濃度のL-Argを必要とする。特に神経細胞内のL-Arg濃度は細胞外L-Argへの依存度が高く,シトルリン濃度とL-Arg濃度の比がNOSによるNO産生量を決めるという。これは基質と競合的阻害物質の概念で説明されるといえる。
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