特集 生命科学のNew Key Word
11.薬理/生理
アルギニンパラドックス
中木 敏夫
1
Toshio Nakaki
1
1帝京大学医学部薬理学講座
pp.526-527
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100635
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背景
L-アルギニン(L-Arg)が注目を集めるようになったのは,一酸化窒素合成酵素(NOS)の基質であることが明らかになったからである。NOSには3種類のアイソザイム(type Ⅰ~Ⅲ)がある。それぞれの精製酵素から得られるKm値は1-2μMである。一方,生体内のL-Arg濃度は血漿,細胞内いずれも約100μMである。このことより,NOSに対して,L-Argは細胞内濃度によりすでに十分な基質濃度に達していることになる。したがって,L-Argを増加させても大きな反応として認知できる量のNOが新たに産生されるとは考えられない。それにもかかわらず,新たに生体外からL-Argを追加するとNOの産生量が増加し,NOによる生体反応が惹起されることが知られている。この現象をアルギニンパラドックスと呼ぶ。
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