特集 細胞質分裂
特集に寄せて
馬渕 一誠
pp.172
発行日 2002年6月15日
Published Date 2002/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902391
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細胞の分裂は生物が増殖あるいは成長するために必須の生命活動である。その過程は,細胞周期のS期に倍加したDNAを染色分体として分離させる核分裂と,これらを二つの娘細胞に分配する細胞質分裂の二つの段階で行われる。これらの過程は細胞が行う様々な運動の中でも普遍的なものなので,その基本的な機構は進化の過程で保存されてきたと考えられる。核分裂も細胞質分裂も細胞骨格タンパク質が主役として行われるが,前者は微小管系が担い,後者はアクチン繊維系が担うというぐあいに,役割を分担しているところは興味深い。これらの二段階は細胞分裂周期の中で正しい時期に正しい順序で行われる必要があり,そのために細胞内の情報伝達系による整然とした制御のもとにあると想像される。また,これらのできごとは細胞内の正しい部位で行われなければならず,空間的な制御も重要なファクターである。本特集では特に最近,著しく研究が盛んになってきた細胞質分裂の機構についてさまざまな観点からの研究を紹介する。
動物細胞や酵母の細胞質分裂は分裂面の細胞表層のくびれによって進行する。このくびれ部分(分裂溝)には多数のアクチン繊維を主成分とする収縮環(contractile ring)が見出されている。収縮環はアクチンとミオシンの相互作用によって収縮し,細胞を二分する。この構造は細胞が分裂する時にだけ形成される一過性の構造である。
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