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特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
昆虫の液性および細胞性生体防御におけるプロテアーゼカスケード
An insect protease cascade in humoral and cellular defense mechanisms
芦田 正明
1
Masaaki Ashida
1
1北海道大学低温科学研究所生化学研究室
pp.194-201
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902113
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プロテアーゼカスケードとして最もよく知られているのは血液凝固系である。解析が進んでいるのは哺乳動物とカブトガニの血液凝固系で,いずれの系においてもセリンプロテアーゼが主役を演じている。血液(血リンパ)を持つ多細胞生物では,この液性成分を失うことは恒常性維持に致命的なのは明らかである。従って,血液(血リンパ)を持つ動物には,無脊椎動物・脊椎動物の如何を問わず血液凝固系が存在し,そこではセリンプロテアーゼが主役を演じていると考えて間違いないと思われる。しかしながら,これまでに無脊椎動物からプロテアーゼカスケードとしての血液凝固系の存在が明確に示されたのはカブトガニの場合のみである。無脊椎動物で進化の頂点に立つとされる昆虫の場合はどうであろうか。現象として血液凝固は確かに観察されている。体外に取り出されると急速に凝固する血液を持つ昆虫や,ほとんど凝固せず,時間とともにかすかに粘性が増す程度の変化しか示さない血液を持つ昆虫などが知られている。昆虫血液の凝固や粘性の変化の分子機構は不思議なことにまだ手つかずの領域として残されている。
ほとんどすべての昆虫血液に当てはまるのであるが,体外に取り出された時の際だった変化が,いわゆる“黒化”という現象である。昆虫血液にはチロシンやドーパなどがかなり高濃度で存在しているが,これらのフェノール性物質が酸化されメラニンが生じるために血液が黒化する。
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