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特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
ショウジョウバエの自然免疫系を制御するシグナル伝達カスケード
Signaling pathways in the innate immune response
倉田 祥一朗
1
Shoichiro Kurata
1
1東北大学大学院薬学研究科医薬資源化学分野
pp.202-207
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902114
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すべての生物は,個体を維持して種を存続させるために,外界からの異物の侵入に対して身を守る生体防御機構を発達させてきた。この身を守るすべは,その個体に遺伝的に備えられている「自然免疫(innate immunity)」と,異物の侵入によってはじめて獲得される「獲得免疫(acquired immunity)」に大別できる。昆虫は,このうち自然免疫だけを用いて身を守っているが,昆虫が地球上に生息している動物種約120万種の80%以上を占めるまで繁栄していることを考えると,この自然免疫がいかに効率よく機能しているのか推察できる。ちなみに,唯一獲得免疫を持つ脊椎動物は,高々その4%にすぎない。
まずはじめに,図1を見ていただきたい。これは,昆虫における自然免疫の活性化を,レポーター遺伝子を導人したショウジョウバエを用いてライブで観察したものである。昆虫に大腸菌を塗布した針で傷を付けると,殺菌活性を有する複数のペプチドや生体防御蛋白が誘導される1)。図1の場合,自然免疫の活性化により抗真菌ペプチドDrosomycinの発現が誘導されると,それをモニターするレポーター遺伝子が発現し,Drosomycinを産生する細胞がレポーター蛋白の蛍光で白く見える。
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