Japanese
English
解説
霊長類海馬の虚血性神経細胞死
Ischemic Neuronal Death in the Primate Hippocampus
山嶋 哲盛
1
Tetsumori Yamashima
1
1金沢大学医学部脳神経外科
pp.152-157
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901686
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I.ニューロンとプロテアーゼ
海馬(cornu Ammonis:CAと略す)のCA 1ニューロンは,霊長類においては近時記憶という重要な役割を担っているにもかかわらず脳虚血に脆弱性を示し,わずか10-20分間程度の短時間でも血流が途絶えると,その数日後には細胞死に陥る1)。霊長類に特異的な虚血性神経細胞死のメカニズムを知ることは,脳梗塞に代表される脳血管障害のみならずアルツハイマー病などの神経変性疾患や加齢に伴う神経細胞死の病態を知り,画期的な治療法を開発する上でもきわめて重要である。従来より主としてげっ歯類を対象として数多くの研究がなされてきたにもかかわらず,虚血性神経細胞死の病態に関しては最近になるまで不明な点が実に多く1),有効な治療法はなかった。
ニューロンは胞体の大きさに比べて極端に長い神経線維と多数の短い樹状突起を有し,これらが互いに無数のシナプスを形成し,情報伝達の複雑なネットワークを形成している。このような特徴を備えた細胞は,その機能を果たすためにレセプターやチャネルなどの多種多様な膜蛋白と細胞骨格蛋白,その他の関連蛋白を代謝回転(turnover)させる必要がある。したがって,必然的に蛋白の産生と破壊とを頻繁に繰り返さねばならないため,神経細胞には蛋白を産生する小胞体(いわゆるニッスル小体)と蛋白を破壊するリソソームという細胞内小器官がことに発達している。
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