サルとヒトの比較産科学・17
霊長類の性と生殖(Ⅵ)
大島 清
1
1京都大学霊長類研究所
pp.541-551
発行日 1981年7月25日
Published Date 1981/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205880
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まえがき
桜の花が散りはじめている。かわって奥まった公園でピンクに染まったしだれ桜が香気を放っている。
山の斜面のうすむらさきのツツジが恥じらうように顔をのぞかせはじめた。今年は桃よりも桜の開花の方が早かった。桜桃のいずれが先に咲きはじめるかは前年の夏・冬の気象条件によって決まるものらしい。近ごるは桃畑の数がめっきり減ったが,それでも犬山の塔野地から前原地区の丘陵地帯は,それこそ桃色の花のまっさかりだ。『ひまわり』という映画にあったロシアのひまわり畑に及ぶべくもないが,それなりにピンク色の毛氈は圧巻である。桃花のもとにたたずみ,桃園より佳人が現われいで美酒に酔いしれると,まさにに「桃源郷」である。陶淵明の『桃花源記』に出てくる,俗世間を離れた理想郷のことだが,犬山ほど人里を離れると仙境の片鱗をうかがわせることになる。
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