特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
2.Gタンパク共役型
1)アミン・アミノ酸受容体
ATP受容体
井上 和秀
1
Kazuhide Inoue
1
1国立医薬品食品衛生研究所薬理部
pp.351-353
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901604
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ATP受容体の分類については本誌48巻5号で紹介した1)が,その後大きな変化があった。一つには,それまでG蛋白共役型ATP受容体グループに加えられていたP2Y5およびP2Y7がグループからはずされた。前者は放射性リガンドを結合するも細胞内で本グループ特有の情報伝達を行わず,後者は実はロイコトリエンB4受容体であることが明らかになった2)からである。
もう一つは,サブタイプ同定の技術的問題である。ATP受容体サブタイプには特異的アゴニスト,アンタゴニストがいまだに存在せず,そのためにサブタイプ同定の手段に数種の非特異的アゴニストの強度順序を用いている。作用強度比(一般にはED50値を用いる)が10~1,000倍あるようなことはざらであり,従って使用濃度差が10~1,000倍となる。こうなると,アゴニストの純度が問題となる。例えば,P2Y6に対するアゴニスト強度比は上記分類表作成時ではUTP>ADP=2-methylthio ATP(2-MeSATP)>ATPとなっていたが,HPLCで精製した直後のアゴニストを使った場合,強度順位はUDP≫UTP>2-MeSATP=ADPとなり,ATPは活性なしとされた3,4)。どうやらこれまで認められていたATPの作用は,試薬「ATP」に不純物として含まれていたADPの作用であったらしい。
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