特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅰ.受容体に作用する薬物
1.イオノトロピック受容体
1)陽イオンチャネル内蔵型
ATP受容体
井上 和秀
1
Kazuhide Inoue
1
1国立医薬品食品衛生研究所薬理部
pp.326-328
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901596
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陽イオンチャネル内蔵型ATP受容体はアミノ酸400~500個で構成されるポリペプチドで,分子内に膜貫通ドメインが二つあり,N末,C末を細胞内に位置しているとされている。これらがいくつか会合してイオンチャネルを形成し,神経伝達物質として放出されたATPにより刺激を受けて,そのチャネルを開き,非選択的にカチオンを通す。現在P2X1からP2X7まで7種類のサブタイプが知られているが1-3)(表1),それぞれに対する特異的なアゴニストとアンタゴニストは,P2X7に対するもの以外,ほとんど見つかっていない。これが主たる原因で,ATP受容体の機能に関する研究はいまだに遅れている。受容体サブタイプの判別には,次善の策として,実験対象のサブタイプに対するいくつかのアゴニストの作用強度を比較し,強度順序により決定するという方法を用いる。ただし,ATPはじめ多くのアゴニストは細胞膜外の代謝酵素により急速に失活するが,用いる実験標本によりその代謝活性が異なるために,同じ受容体サブタイプが発現しているにもかかわらず,異なった強度順位を与えてしまうこともある。また,用いるアゴニストにはかなりの活性不純物が混入し,高濃度で検討する場合には不純物の効果をポジティブフォールスとして判定する可能性があるので注意を要する。
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