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特集 軸索誘導
中枢神経の再生と軸索誘導―末梢神経移植により再生した網膜神経節細胞軸索の上丘投射様式
Axonal regeneration and guidance in CNS neurons
澤井 元
1
,
福田 淳
2
Hajime Sawai
1
,
Yutaka Fukuda
2
1岡山県立大学保健福祉学部
2大阪大学大学院医学研究科情報生理学[医学部第二生理学教室]
pp.583-587
発行日 1997年12月15日
Published Date 1997/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901275
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成熟哺乳動物の中枢神経細胞の軸索は再生能力に乏しく,一度損傷をうけた中枢神経線維はほとんど再生することなく起始細胞を含めて変性・消滅してしまうことは一般的によく知られている。しかし,軸索をとりまく微小環境を実験的に変化させることにより,損傷軸索を再生させることができる1)。例えば,網膜神経節細胞はその軸索(視神経)を眼球の直後で切断すると逆行性変性に陥り,切断6ヵ月後までに全神経節細胞の95%が死滅する2)。ところが,視神経の切断端に同一個体の末梢神経を移植吻合すると,逆行性変性が抑制されるだけでなく,数%の神経節細胞では軸索再生が認められ,その軸索は移植片内を3cmにわたって再伸展する3-5)。この移植片の中枢端を中脳の視覚中枢である上丘に外科的に接合させると,末梢神経移植片内を伸展した網膜軸索は上丘ニューロンとシナプス結合を再形成する3,6)。再形成された網膜―上丘間シナプス結合が機能しうることは,網膜で受けた光情報が上丘に伝達されること7,8),あるいは光刺激を手がかりとした行動発現が観察されること9-11)によって確認されている。
網膜―上丘間結合は形態学的・生理学的・行動学的手法により評価できるため,従来から発達期の視神経の軸索誘導機構に関する研究に用いられてきたが,最近,可能となってきた視神経の再生軸索の誘導機構を調べる上でも恰好の研究モデルの一つとなる。
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