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はじめに
「細胞骨格(cytoskeleton)」という概念が提出されてから十数年になるが56),その研究は比較的最近になって急速な進歩を遂げた57)。細胞骨格とは「細胞内にあって,細胞になんらかの構造的支持を与えるもの」といった程度の漠然とした概念ではあるが,細胞の多様な生命現象との密接な関係が次々と明らかにされるに従い,急速に脚光を浴びるようになった。細胞骨格をなす主な要素は,哺乳動物の細胞ではミクロフィラメント(microfilament)(直径約6nm),10nmフィラメント(直径約10nm)および微小管(microtubule)(直径約24 nm)の3種類の線維構造であると考えてよい。
神経軸索は,細胞骨格としてよく発達した線維構造を有する89)。その線維構造は,光学顕微鏡レベルで銀染色などで染まる神経原線維(neurofibril)として,古くから記載されてきたが,現在では,電子顕微鏡や生化学技術の進歩に伴なって,その実体が明らかにされつつある。とくに,軸索の成長,興奮,物質輸送などと細胞骨格の関係が近年多くの研究者の注目を集め,研究報告の数が飛躍的に増大しているのが現状といえる。この小稿では,軸索内の物質輸送に興味を持って行なった筆者らの観察を混じえながら,軸索細胞骨格の研究の現状をまとめてみたい。
The present article reviews the recent progress in the morphological and biochemical studies onthe axonal cytoskeleton. In mammalian cells, three classes of filaments are recognized as major components of the cytoskeleton: microfilament (6 nm thick), 10nm- filament (10 nm thick), and microtubule (24 nm thick). The cytoskeleton of myelinated axons is structurally rather simple in its variety of components: it is mainly composed of longitudinally oriented microtubules and neurofilaments which are connected with each other by wispy filamentous structures.
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