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特集 ミトコンドリア
虚血後再灌流におけるミトコンドリア膜の変化―心筋を例として
Effects of coronary reperfusion after ischemia on the dynamic micro structure of mitochondrial membranes
小山 富康
1
Tomiyasu Koyama
1
1北海道大学電子科学研究所細胞機能分野
pp.707-711
発行日 1994年12月15日
Published Date 1994/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900869
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I.心筋細胞膜の破綻から ミトコンドリアの障害へ
生体の諸機能は酸素が恒常的に適当に供給されることを前提として成り立っている。何らかの理由によって供給が絶たれるとき,例えば冠動脈に閉塞が生じて血流による心筋への酸素供給が途絶えれば心機能は低下し,生命の急速な危機が訪れるので,冠動脈の血行再建は生命の維持に必須である。ところが,血行を再建すると,心機能はさらに悪化の途を辿ることが多い。虚血による高エネルギー燐酸の枯渇にともなう膜の脱分極によって,細胞膜のCa2+イオンの透過性は高まる1)。細胞質やミトコンドリアのCa2+濃度が上昇すれば,種々の蛋白質分解酵素が活性化される。McCordの説を借りれば,活性化された蛋白分解酵素は呼吸酵素系の一つであるキサンチンデヒドロゲネースをキサンチンオキシデースへ変化させる。この酵素は電子を直接酸素へと流出させ酸素ラジカルを作り出すという2)。これはさらに反応性の高いOH・となり,ミトコンドリア膜の生体膜の燐脂質,さらには酵素蛋白をも酸化させる。燐脂質二重層に整列した燐脂質分子も分子運動を行い,絶えず揺れ動いているが,酸化側鎖が生じれば,疎水性は減じ膜粘性は増加し,燐脂質分子が揺動できる角度は減少する3)。他方細胞内Ca2+の上昇は,燐脂質分解酵素を活性化させる。燐脂質分解酵素A2は生体膜の燐脂質をリゾ燐脂質と脂肪酸へ分解する。
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