特集 現代医学・生物学の仮説・学説
3.発生・分化・老化
老化研究の諸問題
今堀 和友
1
1三菱化成生命科学研究所
pp.504-505
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900624
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概説
老化と加齢:老化も加齢もともに「Aging」の訳であるから,両者が同一義に使用されることが多い。しかし,語源が同一であっても,いったん訳されてしまうと両者の間にはかなりのニュアンスの差が生じる。加齢には幼児が成人になる過程も含まれてよいはずであるが,老化にはこの過程が含まれていないという違いがある。しかしそれだけではない。たとえ加齢を人生の後半の部分に限定したとしても,老化とは意味が異なるし,それによって研究態度にも違いを生じる可能性がある。そもそも「老」という字が,「長髪の老人が杖にすがってやっと立っている」形を示す象形文字から出発しているということからもわかるように,老とは単に齢を重ねるというだけではなく,それによって身心の機能の低下をも意味している。
老化の研究には比較生物学的な立場で行なわれるものが多い。たとえば生後10ヶ月のラットと2ヶ月のラットにつき、それらの行動,生理的機能,組織,代謝などにつき比較し記述したものが多々みられる。これらは加齢的立場からの研究としてはすべて認められるのであるが,老化的立場からすれば,機能の低下とそれについての考察とが加えられなければならない。
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