Japanese
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展望
Pathographie研究の諸問題(その2)—その現況
Zur Probleme der pathographischen Studien. II. Der gegenwärtige Zustand
宮本 忠雄
1
T. Miyamoto
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Aus der Neuropsychiatrischen Klinik der Tokyo Ika-Shika Universität
pp.637-651
発行日 1964年9月15日
Published Date 1964/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200741
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Ⅰ.まえおき——最近数十年間の病誌的研究の動向
前回でも触れたように,病誌研究はこの数十年間にかなりの変遷をけみしている。これをPathographieの全般的退潮とみる見方5)7)8)もあるが,そのようなPathographieはむしろ古典的な「天才論」ないし「天才と狂気」論としてのPathographieにほかならない。このことは,おそらく,現代における天才そのものの衰退を忠実に反映しているのであつて,時代現象を敏感に看取するはずの「精神病理学的洞察と歴史眼」2)(Jaspers)はすでにこのような「時効にかかつた」7)問題圏を立ち去つて,べつの分野へと分けいりつつあるといつてよいかもしれない。こうした努力は,結果的には,ふたたび病誌的領域をふかくそしてひろくたがやすことになる。
では,べつの分野とはなにか?そのひとつは,天才ならぬ凡庸な病者の凡庸な創造物をもう一度みなおすことであり,もうひとつは,とりわけ近代芸術家のなかの一群になんらか「神経症」的な葛藤ないし機制をさぐろうとする傾向であり,のこるひとつは,いわゆるモダン・アートなど現代における文化形象の心理学的探究であつて,いずれも古典的意味でのPathographieとはいいにくい領域である83)。
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