特集 現代医学・生物学の仮説・学説
1.細胞生物学
リソソームと食機能
西村 行生
1
,
姫野 勝
1
1九州大学薬学部生理化学教室
pp.412-413
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900592
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概説
リソソームは一重の限界膜に囲まれた小顆粒で,その内部は膜結合タンパク質であるv-ATPase(液胞型ATPase)によりpH4.5の酸性に保たれている。リソソーム内には強力なエンドプロテアーゼ活性を有するプロテアーゼ群(カテプシン)が存在しており,細胞内外より取り込まれた物質の分解を担っている。
細胞内のタンパク質はそれぞれ固有の半寿命をもっており,たとえば代謝調節に関与する酵素や癌遺伝子産物の寿命は短いのに対して,細胞の構成タンパク質は一般に長寿命である。また細胞の構成成分であるタンパク質の寿命は,細胞の代謝の変化やホルモン,栄養バランスにより変動する1)。一般に,リソソーム内ではおもに長寿命のタンパク質が分解されることがこれまでの生化学的研究により明らかにされているが,これに対して短寿命のタンパク質は非リソソーム経路で分解反応が進むと予想されている。いずれの分解経路もATPの存在下で反応は進む。これまでに細胞内のタンパク質分解の80%以上はリソソーム経路で行われているという報告もあるが1),現在そのタンパク質分解の制御機構の全体像は明確でない点が多い。
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