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ErbB4は4種類あるErbB受容体タンパク質(ErbB1,ErbB2,ErbB3,ErbB4)の一つで,他のErbBファミリータンパク質同様,1回膜貫通型の受容体チロシンキナーゼの構造および機能を有している。ErbB受容体ファミリーのリガンドは,上皮成長因子(EGF)に属するタンパク質と,ニューレグリンファミリー(NRG)に属するタンパク質に大別されるが,ErbB1のリガンドがEGFファミリータンパク質であるのに対し,ErbB3とErbB4はニューレグリンが主である。ErbB2に対するリガンドは今のところ見つかっていない。ニューレグリンのうち,NRG1-5がErbB4と親和性を有し活性化する。ErbB受容体はリガンドと結合することによって,他のErbB受容体との親和性が高まり,二量体を形成する。この結果,細胞内のチロシンキナーゼドメインが相手方のErbB受容体の細胞内領域をリン酸化し,これによってp85,Src,Shcなどがリクルートされ,シグナル伝達が惹起される。ErbB4は,主にRas-MAPKとPI3K-Akt経路の誘導に関与している。ErbB4のリン酸化はRas-MAPK経路の持続した活性を誘発し,細胞周期の休止や細胞の分化を引き起こすと考えられている1,2)。
ErbBファミリータンパク質は,どのアイソフォーム同士の組み合わせでも二量体を形成できる。そのため,NRGと結合しないErbB1が,ErbB4とヘテロ二量体を形成することによって,NRGがErbB4を介してErbB1をリン酸化し,ErbB1のシグナルを誘発することができる。同様にEGFと結合しないErbB4も,ErbB1との結合を介してEGFによってシグナルを誘発される。ErbBタンパク質の発現量が上昇した場合,リガンド非依存的に二量体が形成され,自己リン酸化を引き起こすことが,一部の癌において知られている1,2)。
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