Japanese
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特集 細胞機能とリン酸化
シナプス可塑性とリン酸化
Synaptic plasticity and phosphorylation
津本 忠治
1
Tadaharu Tsumoto
1
1大阪大学医学部バイオメディカル教育研究センター高次神経医学部門
pp.258-266
発行日 1992年8月15日
Published Date 1992/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900350
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一定の入力後にシナプスの伝達効率が変化したりあるいはシナプスの新生や退行が起きたりすることをシナプス可塑性と呼んでいる。このようなシナプス可塑性がわれわれの脳における記憶・学習や発達脳における適応的機能変化の基礎過程であるという考え方が現在有力である。この観点にたったシナプス可塑性研究は,現在まで,おもに哺乳類の海馬と大脳新皮質,小脳およびアメフラシなどの下等動物神経系においてなされてきた。その中で,最近このシナプス機能の可塑的変化にはシナプス後部での蛋白質リン酸化酵素(キナーゼ)の活性化が重要であることが明らかとなってきた。たとえば,海馬のCA 1領域や皮質視覚野では次のように考えられている―高頻度入力によってN-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体が賦活され,Ca2+がシナプス後部に流入する。このシナプス後部におけるCa2+濃度の上昇が種々のキナーゼを賦活し,それがシナプス長期増強(Long-term potentiation,LTP)誘発のトリガーとなる1,2)。このキナーゼ活性化説は多くの実験によって支持され,現在はどのような基質蛋白質がリン酸化されるかに研究の焦点が移りつつある。
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