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話題
アプリジアのシナプスの可塑性研究の現状
Synaptic plasticity in sensorimotor connections of Aplysia
杉田 修三
1
Shuzo Sugita
1
1Department of Neurobiology and Anatomy University of Texas Medical School at Houston
pp.169-173
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900549
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アプリジアの感覚細胞と運動細胞をつなぐシナプスは,学習や記憶に相当すると考えられる行動上の変化に伴う変化を示し,その可塑性のメカニズムの研究が細胞・分子レベルで広範に進められてきた1-3)。とくに,水口と尾という2つの部位の引っ込め反射に関与する,感覚細胞と運動細胞のシナプスがよく調べられている。これらの反射は,頭部や尾に強い苦痛刺激を与えるとより強くなる。この行動上の変化をsensitizationと呼ぶが,その細胞レベルでの変化の1つが,感覚細胞と運動細胞をつなぐシナプスの増強(synaptic facilitation)である。sensitizationには数十分以下の短期のものと,24時間以上続く長期のものがあり,長期的な変化に限ってタンパク質の合成が必要であるということがいわれているが4),ここでは短期のsensitizationに関係するシナプスの変化に限って話を進める。というのは,長期的なsensitizationのメカニズムについては,現時点では仮説先行的であるといわざるをえないからである。1982年に,短期的なsensitizationに関する細胞・分子レベルの優れた仮説が現れ,短期的sensitizationのメカニズムの研究は一応の終止符を打ったかにみえた3)。しかし,その後の研究によってこの仮説はさまざまな修正を迫られることになり,また多くの点について解決がついていない。
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