Japanese
English
特集 意識と脳
注意の心理学―視空間的注意を中心に
Psychology of attention: Its visual-spatial aspects and related issues
下條 信輔
1
,
彦坂 興秀
2
Shinsuke Shimojo
1
,
Okihide Hikosaka
2
1東京大学教養学部心理学教室
2生理学研究所生体調節研究系
pp.30-36
発行日 1992年2月15日
Published Date 1992/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900312
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.「注意」とは?
知覚・認知心理学でいう「注意」とは,なんらかの手がかりや意図的な努力などによる,局所的で一時的な感覚情報処理の選択と促進をさす。またその裏の意味で,選択されなかった情報の排除や抑制を含む場合もある。日常用語としての「注意」の意味からそれほどかけ離れているわけではないのに,実験的探究の対象としてみた場合つかみどころがなく,タブー視する人さえあるのは何故であろうか。一つには,注意が生体の内部状態と考えられ,客観的に観察可能な刺激変数や行動に直接還元しにくいために,行動主義的研究方法の伝統にそぐわなかったことを指摘できる。しかし最近になって,内部過程を重視する認知科学的アプローチの台頭,刺激とも反応とも直接随伴活動しない「注意関連」ニューロンの,高次皮質や基底脳における発見などに伴い,注意の行動学的研究の重要性が再認識されつつある。とりわけ注意が;a)高次認知系と低次感覚系との協応,b)異なる感覚モダリティ間での協応,c)感覚系と運動系の協応,d)自覚的な過程と無自覚的な過程との協応などにとって不可欠の役割を果たしていることから,今後ますます高次脳機能研究の中心的テーマとなることが予想される。
注意の研究史は長く,そのすべてを展望することはできない。そこでここでは,主として視空間的注意に関する従来の方法と知見の要点を手短かにまとめた上で,最新の動向を重点的に紹介したい(他の総説1-6)を参照せよ。聴覚における注意や注意の非空間的側面などを含む総説もある7-9))。
Copyright © 1992, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.