Japanese
English
特集 脳と個性
Ⅲ.“個性”の実験的理解
脳の発生・発達と“個性”
Brain development and “individuality”
稲田 仁
1
,
大隅 典子
2
Inada Hitoshi
1
,
Osumi Noriko
2
1国立精神・神経医療研究センター神経研究所病態生化学研究部
2東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野
キーワード:
脳の個体差
,
臨界期
,
遺伝要因
,
環境要因
,
母仔分離誘導超音波発声
Keyword:
脳の個体差
,
臨界期
,
遺伝要因
,
環境要因
,
母仔分離誘導超音波発声
pp.63-68
発行日 2024年2月15日
Published Date 2024/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201816
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脳の発生・発達は,一定の幅はあるものの,通常の発生過程においては厳密に規定されている1-4)。遺伝的な疾患やウイルス感染などによって生じる障害を除き5,6),大脳,小脳,脳幹といった脳の基本的なマクロな構造はヒトでもマウスでも共通しており,運動野や視覚野,体性感覚野といった機能的な区分についても,種が同じであれば異なる個体においても相対的な位置関係にほとんど差はない7)。マクロな脳構造のみならず,全脳的または局所的な神経回路レベルにおいても基本的な共通パターンがあり,細胞の構成,神経伝達物質の種類や働き,遺伝子発現においてもヒトとマウスで共通している点も多い8-13)。その一方で,各個体の脳の機能的特徴,特に行動的な表現型に注目すると,遺伝的に多様なヒトではもちろんのこと,遺伝的背景が均一な実験用マウスにおいてさえも,発生・発達過程および発達後にも多様な個体差(個性)が観察される14-19)。本稿では,ヒトやモデル動物において脳の発生・発達の過程で観察される個体差(個性)について紹介し,続いて,筆者らの研究グループが最近報告したマウス新生仔における音声コミュニケーション発達の個体差について解説する。
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