Japanese
English
特集 関わり合う脳
Ⅲ.争う脳
攻撃性の個体差を生み出す神経生物学的基盤
Neurobiological mechanisms for individual differences in aggression
高橋 阿貴
1
Takahashi Aki
1
1筑波大学人間系行動神経生物学研究室
キーワード:
攻撃行動
,
個体差
,
遺伝要因
,
攻撃欲求
,
外側手綱核
Keyword:
攻撃行動
,
個体差
,
遺伝要因
,
攻撃欲求
,
外側手綱核
pp.56-61
発行日 2025年2月15日
Published Date 2025/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760010056
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他個体と何かを取り合うとき,例えば限られた餌や交尾相手,なわばり,より高い社会的地位などを得ようとする場面では,争いが生ずる。争いに勝ち,これらの資源を獲得することによって,生存や繁殖の成功率が高まるため,攻撃行動は昆虫から哺乳類に至るまで多くの種で観察される。しかし,攻撃行動はエネルギー消費が大きく,負傷のリスクが伴うため,過度な攻撃を抑制するしくみも進化している。多くの種では,同種個体に対する攻撃行動は,相手の強さを見極めるための威嚇が中心であり,直接的な攻撃で相手を殺すことはほとんどない1)。
攻撃性には大きな個体差も存在し,常に攻撃的な個体(攻撃個体)もいれば,全く攻撃行動を示さない個体(非攻撃個体)もいる。攻撃個体は争いに勝つ可能性が高く,餌などの資源が乏しい環境や,新たな土地に移住する際に強みを持つ。一方,非攻撃個体もまた,共有資源が豊富な環境で集団生活を送る際には利点があるだろう。このような個体差は,どのような生物学的メカニズムにより生み出されるのだろうか。本稿では,攻撃行動における個体差を生み出す遺伝的基盤および神経基盤について概説する。
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