特集 新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨
特集「新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨」によせて
高柳 広
1
1東京大学大学院医学系研究科免疫学
pp.514
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201781
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骨・軟骨は,身体を支え運動を可能とする運動器の一部として考えられてきた。しかし,造血幹細胞をはじめとする免疫細胞やその前駆細胞を擁する免疫系の一部でもある。これを背景に,骨と免疫系の相互作用を研究する骨免疫学と呼ばれる領域が発展した。更に,カルシウムやリンの貯蔵庫であることから内分泌系の制御を受けると同時に,他臓器を制御する因子を産生することで,脊椎動物特有の生体系に欠かせない内分泌器官の役割を果たすことが注目を集めてきた。骨・軟骨が産生する制御因子はオステオカイン,骨を中心とした生体制御ネットワークは,オステオネットワークと呼ばれ,医生物学の新たなパラダイムを提供してきた。また,運動器は,骨・軟骨だけでなくそれらを動かす筋・腱・脳・神経まで含めた運動器系(ロコモーターシステム)全体として把握する必要があると考えられるようになってきている。
本特集では,骨・軟骨の組織学・解剖学といった基本的な情報から,骨細胞・破骨細胞・骨芽細胞・軟骨細胞などの骨格系構成細胞の分化や機能,他の生体系との相互作用,疾患との関連まで,骨・軟骨の最先端の研究を実践する先生方に執筆をいただき,最新の骨・軟骨代謝学を俯瞰できるような構成となっている。マウス遺伝学,ゲノムワイド解析,オミクス解析,シングルセル解析,イメージング技術の発展はこの領域の発展を支えており,本特集でも最新の技術的発展を取り入れた成果について紹介いただいた。
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