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健康な状態から疾病の状態に至る過程を,生体内の細胞間や遺伝子間の複雑な相互作用(ネットワーク)における急激な遷移として捉え,疾病になる直前の状態(以下,未病状態と呼ぶ)を,遺伝子のmRNAの発現量や血中のホルモン濃度などにおける“ゆらぎ”に着目して検出する手法として“動的ネットワークバイオマーカー(Dynamical Network Biomarker;DNB)理論”が提案され1),様々な疾病に対して,その有効性が示されてきている2-4)。これは,発症のメカニズムを,生体のダイナミクスにおいて反応速度といった定数が何らかの経年的あるいは外的要因により徐々に変化し,あるクリティカルポイントに達すると,急激に健康な平衡状態から別の平衡状態である疾病状態に臨界遷移する現象(分岐現象という)として捉え5),疾病状態に遷移する直前でのmRNA発現量のゆらぎを検出するものである。このDNBにより未病状態が検出された際に,発症を未然に防ぐための超早期治療(予防治療,先制治療とも呼ぶ)を行うことが求められるが,超早期治療は疾病状態から治療する手法とは根本的に異なるため,新たな介入手法の開発が必要である。すなわち,未病状態での超早期治療を確立するために,DNBにより未病状態が検出された時点で該当する生体ネットワークのどの部位に,どのように介入すればよいかを推定する介入(以下,DNB介入と称す)理論の構築が不可欠である。
本稿では,DNB理論と制御理論を融合することで最近得られたDNB介入手法について解説する6,7)。なお,こうしたDNBに基づく介入方法の研究はまだ始まったばかりであり,現段階でも継続的に改良されてきていることをお断りしておく。
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