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あとがき
栗原 裕基
pp.372
発行日 2020年8月15日
Published Date 2020/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201193
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コロナ禍が世界を席巻する中で大学での研究も制限され,研究活動は不要不急なのかと首をかしげてしまいますが,こうした時期は逆に自分の中にある「不急の要」を見つめ直すいい機会なのかもしれません。しかし,科学が日々急速に進歩する中,のんきなことを言っていられないという思いも一方ではあります。本特集のテーマである構造生物学も,クライオ電顕の登場などで急速に研究が進み,現在最も注目される分野の一つになっています。「不急の要」の追求にも新しい視点や方法論を取り入れていく「急」によってモノの見え方がどんどん深まっていくということを,今回の特集記事は実感させてくれます。
松尾芭蕉は俳諧の理念として「不易流行」を説きましたが,不易(変わらざるもの)と流行(変わりゆくもの)の根本には同じ風雅を極めようとする精神があるといいます。真理を極めようとする科学においてもそれは通じるということを構造生物学の研究から学びつつ,改めて「不急の要=不易」を見つめ直したいと思う次第です。ご編集いただいた吉川雅英先生,ご寄稿いただいた諸先生方に改めて感謝申し上げます。
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