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あとがき
栗原 裕基
pp.574
発行日 2019年12月15日
Published Date 2019/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201104
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本号では,「生体の科学」誌として初めて「芸術」をテーマに特集を企画しました。Artの語源はラテン語のarsであり,その起源はギリシア語のテクネー(技術)に通じるといいます。「芸術は長く,人生は短し。」と訳されている有名な格言 ‘Ars longa vita brevis.'も,もともとは医術の習得に時間がかかることを意味したヒポクラテスの箴言だったそうです。そう考えると,芸術も科学技術も人間の同じ欲求に根差した本源的な営為と言えるのでしょう。本号には,深谷雄志博士による転写動態のライブイメージングという新しい技術が紹介されていますが,科学も芸術も,確かな技術の裏打ちから初めて見えてくる真理や美の世界を追求するところに感動が生まれるように思います。さらに本号には,月田早智子博士によるご主人月田承一郎博士の足跡を回想するコラムも掲載されています。博士の生涯とその後世への影響を綴られた手記に心打たれるのも,お二人の卓越した業績だけでなく独自の技術を持ってひたむきに真理を追究し続けたそのお姿を髣髴させるからでしょう。芸術と科学の融合というテーマは,我々研究者が襟を正して科学と向き合う原点に立ち返る,一つの契機を与えるようにも思えます。
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