- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
新しく合成されたタンパク質はフォールディングを経て,それぞれのタンパク質特有の立体構造を形成する。しかし,種々の環境変化や遺伝的変異により立体構造に異常が生じ,変性タンパク質が細胞内に蓄積すると細胞に不都合なため,細胞内には,変性タンパク質を検知し,修復もしくは分解する“タンパク質品質管理機構”が存在する(図)。この品質管理機構の主要な因子として分子シャペロンがあるが,分子シャペロンは未成熟のタンパク質,もしくは変性タンパク質の疎水性部位を認識して結合し,フォールディングや安定化を促進する。一方,変性タンパク質の分解経路としては,ユビキチン-プロテアソーム経路,もしくはリソソームやオートファジー経路が知られている1)。
分子シャペロンにはストレスタンパク質に属するHsp70/DnaK,Hsp90,Hsp60(CCT/GroEL)などが知られており,シャペロン補助因子やシャペロン調節因子も含めると膨大な数となる。タンパク質は細胞内のあらゆる場所にあるため,必然的にタンパク質の品質管理機構も細胞内のあらゆる場所,あらゆる場面で働く必要がある。細胞質同様にオルガネラにも独自の分子シャペロンが存在する。小胞体のHsp70としてBiP/Grp78,Hsp90としてGrp94,また,ミトコンドリアのHsp70としてmtHsp70/Grp75などが知られている。これらのストレスタンパク質の多くは,種々のストレス下で転写レベルでの誘導が起こりタンパク質の品質管理に貢献する。
本稿では,特にタンパク質品質管理機構について研究が進んでいる細胞質と小胞体に注目し,細胞質のHsp70と小胞体のBiPについてふれたい(分解系については他の項を参照)。
Copyright © 2015, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.