増大特集 細胞シグナル操作法
Ⅰ.分子からみたシグナル操作法
4.その他
平面内細胞極性シグナル
石 東博
1,2
,
藤森 俊彦
2
,
上村 匡
1
Shi Dongbo
1,2
,
Fujimori Toshihiko
2
,
Uemura Tadashi
1
1京都大学大学院生命科学研究科細胞認識学分野
2基礎生物学研究所初期発生研究部門
キーワード:
平面内細胞極性
,
planar cell polarity
,
7回膜貫通型カドヘリン
,
非典型Wnt経路
,
nematic order
Keyword:
平面内細胞極性
,
planar cell polarity
,
7回膜貫通型カドヘリン
,
非典型Wnt経路
,
nematic order
pp.446-447
発行日 2015年10月15日
Published Date 2015/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200300
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平面内細胞極性(planar cell polarity;PCP)は,シート状に並んだ上皮細胞がシート内の一方向に沿って発達させる細胞極性であり,主にショウジョウバエの翅毛をモデルとした研究(図A,B)によってPCP形成に必須な分子群(PCP因子)が同定された。近年の研究によって,これらの分子が多くの動物種において,内耳有毛細胞や毛根の配向などの様々な器官形成で重要な役割を果たすことがわかってきた。上皮平面に限らず,初期胚における集団的細胞移動や,神経管形成などの立体的な器官形成においても,PCP因子が働くことが明らかになっており,今後も新規の機能が明かされることが期待される。
“core group”と呼ばれるPCP因子(core PCP因子)は,細胞膜の特定のドメインにのみ局在する(図C,D)。7回膜貫通型カドヘリンであるFlamingoは,このような局在が報告された最初のcore PCP因子であり,翅表皮細胞の近位側と遠位側の細胞境界のみに局在する1)。core PCP因子複合体を介して隣接する細胞が極性の情報を伝え合う。このcore PCP因子の働きに加えて,組織内の特定の細胞群から分泌されるタンパク質の濃度勾配や,体軸あるいは組織・器官の軸に沿った遺伝子発現の勾配により,各細胞が極性情報を受け取る仕組みが共存するらしい。これらの仕組みが協調して,極性情報を全細胞でより正確に解読し,巧妙な器官形成を達成していると思われる。
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