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臓器や器官の形態形成において,構成する細胞集団は液性因子や細胞間接着因子によって細胞骨格構造が制御され,秩序立った運動や形態変化を行う。これには,細胞骨格構造が時空間的に変化して極性化することが重要である。上皮組織を構成する細胞は頂端側(apical)と基底側(basolateral)の軸に沿った頂底極性を持ち,組織の内外の区別をつけるとともに,頂底方向と直交する平面内にも細胞内平面極性(planar cell polarity:PCP)と呼ばれる極性を持ち組織や器官の形を決定している。細胞内平面極性は,ショウジョウバエの翅毛の生える向きが根本から先端にかけて同じ方向に生えていることからその概念が提唱された(図1)1)。これは,翅毛を生やす細胞が翅表面の細胞シート内で極性を持って並んでいることを意味する(図1)。また,ゼブラフィッシュやアフリカツメガエルの胚発生の研究から,原腸形成時の収束伸長(convergence extension)と呼ばれる個々の細胞が中心に向かって移動・集積することで中胚葉全体を伸長させる現象に,細胞内平面極性の制御が重要であることが示された(図1)2,3)。また,神経細胞の非対称分裂や移動,軸索・樹状突起の伸展やガイダンスにおいても細胞内平面極性は重要であることが明らかとなってきている(図1)4)。
このように,細胞内平面極性の制御は細胞の内部構造の非対称化を伴う細胞応答であり,細胞外からの液性因子や細胞接着によるシグナルを受けて細胞集団が協調的に秩序ある組織を作り上げていく過程における基本的な制御機構であると考えられる。本項では,細胞内平面極性形成において重要な細胞外シグナル分子であるWntに注目し,その細胞内シグナル伝達経路とアクチン細胞骨格を制御するRhoファミリーの活性化を中心に,その制御と機能を解説する。
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