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特集 味と匂いの脳科学
Ⅰ.味蕾・嗅上皮から脳への神経回路と情報伝達
霊長類の食性多様化と味覚受容体の進化
Variation of feeding behavior of primates as related to the evolution of taste receptors
今井 啓雄
1
,
石村 有沙
1
Imai Hiroo
1
,
Ishimura Arisa
1
1京都大学ヒト行動進化研究センター
キーワード:
GPCR
,
苦味
,
甘味
,
うま味
,
カルシウムイメージング
Keyword:
GPCR
,
苦味
,
甘味
,
うま味
,
カルシウムイメージング
pp.297-301
発行日 2025年8月15日
Published Date 2025/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.037095310760040297
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21世紀に入って味覚受容体の分子実体が判明してから約四半世紀,ヒトの味覚受容体の研究はゲノム多型(single nucleotide polymorphism;SNP)との関連を中心に行われてきた。また,モデル動物としてのマウスやその他の動物の味覚受容体機能や発現部位,食行動との関連も含めて詳細な研究が行われている。しかし,受容体のレパートリーや感受性の違いなどが大きいため,マウスなどを用いるだけではヒトの食行動の進化を理解することはできない。そのため,ヒトの食行動を理解するためにヒト以外の近縁な霊長類を研究することには意義があると考えられる。
また,これらの霊長類は自然環境で生息・進化してきたため,環境適応などの自然選択が働いている可能性がある。サル類を用いればヒトでは倫理的・環境的に不可能な実験も可能である一方で,近年の動物福祉の観点から,動物そのものを用いた実験よりも,遺伝子や細胞を用いた実験で代替することが求められている。筆者らは近年,遺伝子や細胞を用いた実験を実施したうえで,動物個体を用いて確認を行うことにより,様々な霊長類味覚受容体の類似性と多様性を明らかにすることに成功した。本稿では,これらの例を示したい。

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