増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
6.組織・多細胞社会
(5)“埋め込む”ことで大規模複雑システムを理解する
田嶋 達裕
1,2
,
豊泉 太郎
1
Tajima Satohiro
1,2
,
Toyoizumi Taro
1
1理化学研究所 脳科学総合研究センター
2日本学術振興会
pp.478-479
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200048
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■モデル化困難な大規模データを理解する
生命科学は計測・操作技術の革新と解析・モデル化の理論的進展が協調することで発展してきた。特に近年では,多変数の経時変化を同時記録する技術が急速に進歩し,大規模な生命現象のダイナミクスに関する大量のデータを取得することが可能となりつつある。なかでも,神経科学における計測技術の発展は著しく,脳全体の神経細胞の活動変化を記録できる時代に到達した1)。しかし,いくら大量のデータを取得できても,従来型の恣意的に単純化したモデルの延長だけでは,全脳の動態とその背後のネットワーク構造の全貌を理解することは難しい。
ここでは,もう一つのアプローチとして,非線形力学系の研究において広く用いられてきた基本的な概念である“埋め込み”に注目する。なぜなら,以下で述べるように,埋め込みは具体的なモデルを仮定せずに,システムの因果構造を推定するための一般的な枠組みを与えるからである。
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