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インターネットは非常に大規模なシステムとなり,重要な社会インフラとなってきた。自律分散的なパケット交換型ネットワークであり,その特徴は複雑ネットワーク理論の面からもニューラルネットワークと類似したところがある。近年,モバイル利用などの多様な用途への対応やセキュリティ関連の問題が発生してきたことに伴い,インターネットを作り替えようというプロジェクトが欧米や日本などで立ち上がり,新しい理論を取り込んだネットワーク設計も試みられている。無線ネットワークにおいては,周波数の利用状況や通信品質などを認識しながら通信リソースの利用効率を適応的に最適化するコグニティブ無線技術の研究開発および標準化も進められている。将来のネットワークは,状況をセンシングし,それを基に学習や処理を行い,最適な情報を提供する神経系のようなネットワークとなっていくと考えられる。
脳とインターネットは,どちらも非常に大規模で複雑なネットワークであり,いくつかの類似している面がある。脳の神経回路網(ニューラルネットワーク)の中では,神経パルスがニューロン間を飛び交い,複雑な情報処理を行っている。一方,インターネットでは,パケットという細かいデータの断片がネットワークの中を飛び交い,通信相手端末まで情報を伝達している。ニューラルネットワークの神経パルスも,インターネットのパケットも,集中的なタイミング制御はなされず,自律分散的にやりとりが行われている。ニューラルネットワークでは,ニューロン間のシナプスに可塑性があり,学習や記憶に重要な役割を果たしている。一方,インターネットでは,ダイナミックな経路制御(ルーティング)技術が用いられており,ネットワークの状態に応じて自律的に経路制御表が作成され,宛先ノードまでのパケット転送経路が決められている。2008年現在で,全世界のインターネット利用者は14億人ともいわれている。一方,人間の脳は1000億個以上ともいわれるニューロンからなるネットワークである。ニューラルネットとインターネットは,自律的にネットワークを構成したり学習したりしながら,非同期的に信号をやりとりする非常に大規模なネットワークである。
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